妊娠喪失は胚死滅から?黄体退行から?

牛の専門的内容

イントロダクション

この研究では、プロゲステロン(P4)の増加が胚の着床タイミングと初期妊娠維持に及ぼす影響を調査しています。具体的には、乳牛の妊娠33日目までの妊娠損失が黄体退行(P4の減少)または胚の死(PAGの減少)によって引き起こされるかどうかを、P4とPAGの継続的な測定を通じて関連を調査しています。

方法

コントロールグループとhCGを投与したグループの牛を使用し、P4とPAGの濃度をd 7から33まで毎日測定しました。PAGは妊娠のマーカーとして利用される妊娠特異的らタンパク質である。超音波で胚の心拍を確認することで妊娠を確認しました。

結果

  • P4の増加は、PAGの初期の増加を早めることはありませんでしたが、妊娠2ヶ月目の後半にはPAGが増加しました。
  • 妊娠20日から33日の間に24.6%の牛で妊娠損失が確認され、その約50%が黄体退行によるもの、50%が胚の死滅によるものでした。

考察

この研究では、増加したP4が胚の着床タイミングに影響を与えないこと、しかし妊娠後期にはPAGの増加に寄与している可能性があることが示されました。また、妊娠損失の約半数が黄体退行により、残りの半数が胚の失敗によって引き起こされることが明らかになった。

*ここまでは要約、これ以下は私見

日々の繁殖検診を行う中で、後期胚死滅(授精後17日~42日)は珍しくなく、遭遇します。妊娠鑑定で胎子の拍動が弱かったり、形が崩れていたり、怪しい牛は再チェックとして、次の繫殖検診でチェックするとまぁ多くの場合には胎子はすでにいないです。つまり、最初の妊娠鑑定の段階で肺死滅が起こっていいたのでしょう。

こういう事例が続くと必ず農家さんには「なぜ?どうしたらいい?」と聞かれますが、多要因のためはっきりと答えられないことも少なくありません。感染症が原因なら、レプトスピラ、BVD(牛ウイルス性下痢症)、IBR(牛伝染性鼻気管炎)、トリコモナスも鑑別診断としては上げられますが、確定に至ることは少ないかなと思います。

今回紹介した論文では感染症については触れられていません。また、黄体退行が先の胚死滅と胚の異常が先行する胚死滅が半々という結果でした。結論として、黄体と胚のどっちが原因が多いのか?については50:50です。

胚死滅は20日~33日で比較的多く、黄体退行が先行する場合が、そのうちの50%。ここでやはり気になってくるのが、INF-τやPGF2α、オキシトシンとの関連ですが、ここらへんについては後々、詳しく書きたいなぁと思っています。

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