繫殖成績の評価④空胎日数・分娩間隔

乳牛
  • この記事で分かること
    • 空胎日数とは?
    • 分娩間隔とは?
    • 空胎日数と分娩間隔を評価するときの注意点

空胎日数(平均空胎日数)や分娩間隔(平均分娩間隔)は、昔から使われている繁殖成績の指標です。これらの指標も産次別など、様々な切り口で比較するとその農場の問題点を見つけやすいです。

空胎日数と分娩間隔は図で表すと直感的に理解できます。

・空胎日数とはその名の通り『分娩してから受胎するまでの日数』を指します。そのため、分娩してから妊娠が確認されていない牛は含まれません。

・分娩間隔は『最も新しい分娩とその前の分娩の間隔』を指します。そのため、2産以上の牛でしか評価できません。

これらは繫殖成績の評価に重要な項目ですが、その欠点も理解しなければなりません。ポイントの1つ目は、これらの数値には受胎しなかった牛、つまり繁殖が悪かった結果として妊娠できなかった(分娩できなかった)牛が評価に含まれていないことです。繁殖障害の結果、受胎せず、廃用となった牛が評価されません。2つ目は分娩間隔は2産以上の牛が対象となるため初産牛の繁殖成績が含まれていないこと、また、分娩間隔はその性質上、9か月(妊娠期間)以上のタイムラグがあることです。そのため現状の繁殖状況とは大きく異なる可能性が高いです。

それでは、空胎日数と妊娠率を比較しながらどのように変化していくのかを見ていきたいと思います。

前置きとして、妊娠率の計算方法についてです。妊娠率はVWP(分娩後の自発的待期期間)を過ぎてからのサイクル(21日間)数を数えることがポイントです。妊娠牛は受胎するまでのサイクル数、空胎牛は現在までのサイクル数を数えます。妊娠率は

妊娠頭数÷サイクルの総和×100=妊娠率

として計算します。

例として牛A,B,Cの三頭の群を考えてみます。現在の三頭の状況は図の通りです。赤矢印1つが1サイクルとして記載しました。例えば牛AはVWPを経過してから、4サイクルでAIを行い、妊娠したことを示しています。この三頭の群で空胎日数と妊娠率を計算すると平均空胎日数は120日、妊娠率は15.38%となります。妊娠していない牛Cは空胎日数にカウントされません。

それでは、牛Cが分娩後210日でAIを実施し、妊娠が確認されたとします。すると妊娠率と空胎日数はどのように変わるでしょうか。

平均空胎日数は120日→150日に延長しました。結果、繁殖成績は悪化したと表現されます。しかし、妊娠率は15.38%→20%に増加し、繫殖成績は向上したと示しています。

農場にとっての妊娠牛を得る価値とはどれくらいかというと、計算方法は複雑で、農場やその他の環境によって変動しますが、仮に15万円とすると、上記の例によって牛Cが妊娠したことは農場にとって価値のある結果と考えることができます。しかし、空胎日数ではそれを繫殖成績の悪化と表現し、妊娠率では向上したと表します。このように、妊娠率がその農場の繁殖成績を的確に表現できる指標の一つであることは間違いなく、私も妊娠率は常にモニタリングしながら繁殖検診を行っています。

妊娠率の目標値を農家さんと共有することはとても重要ですが、妊娠率も妊娠鑑定結果が出てから計算されるので、タイムラグが生じます。そのため私は、妊娠率だけでなく、日々の繁殖検診の中では、農場ごとに必要な毎月の妊娠頭数を計算し、その農場の受胎率から逆算した月毎・週毎の目標授精頭数を達成しているかも重要な項目としてモニターしています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました